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そのClarkでは今、フランス・ボルドー出身のMichel Herreriaとモントリオール在住のMax Wyseの二人展が行われている。壁に所狭しと展示された作品群。Herreriaのペン描きドローイングが、Wyseの大きなドローイング6点を取り囲んでいる。その数は80点程にもなるだろうか。昨今の、いかにも現代美術然としてミニマルな、ソフィスティケートされた謎解きのようなアートに食傷気味の方にお勧めしたくなる展示。 Herreriaはドローイングの原点を極めるかのように黒ペンのみで制作している。下書きなしの一発勝負な線には、迷いや失敗という言葉を忘れさせてくれるポジティブさがある。それらは勢いで描かれた線ではなく、じっくり着実に引かれた線であり、その確立されたスタイルと相まって、安定感をかもし出している。人体のデフォルメが主な興味のようで、人型キャラクターが異次元世界にいる場面が繰り返し描かれている。 対照的にWyseの作品はカラフルで、そのメディウムや手法も実に様々だ。マットなアクリル下地に鉛筆、コンテ、あるいは木炭でドローイングし、アクリル、水彩、金泥などで濃淡様々に着彩している。重ね、擦り、にじみ、ぼかし、ひっかきなどが試みられ、ありとあらゆる画材とテクスチュアの見本市のようで、そこに注目するだけでも楽しい。主なモチーフは”おじさん”で、ランニングシャツに手袋といった出で立ちのおじさんが、サスペンスなポーズで活躍している。横長の画面は、左から右にストーリーが展開しているようで、6点の絵を会場の左からぐるりと見て廻ると、ひとつの物語の起承転結を観た気分になった。その6つの幕間に、と言っては失礼だが、Herreriaのドローイングがぎっしりと詰まっているような具合だ。 展示の方法としては、2本の映画を交互に切れぎれに見せられているみたいな状態で、少々疲れる。しかしこの二人展は、作品とその空想世界を展示するとともに、彼らのような、制作量の多いアーティストや、常に新しい試みに貪欲なアーティストの生態をも垣間見せていると思う。 いつもメモを取っている「メモ魔」がいるように、「描き魔」というのがいて、描く事は彼らの生活の一部だ。私は「ドローイング中毒」のアーティストを知っているが、彼はとにかくヒマさえあれば描いている。話しながら描いている。ハミガキコのチューブにまで描いている。こういうアーティストは「自己の内面を追求」したり「現代社会のひずみを描き出す」つもりはなさそうだ。ただ描きたいと思うものを、純粋な喜びを持って描いているように見える。メッセージ性の強いアートが観客に「考える」機会と喜びを与えてくれるように、創造の喜びによって生み出されたアートは観る者に純粋なる「見る」喜びを与えてくれるのではないだろうか。 Inflorescences展は2月17日まで。 | |||||
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文:本田 恵生 | |||||
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