ARCHIVES
第8回は Valerie Syposz(バレリー・サイポーズ)さん (2016/12/24)
アーティスト
版画
 リトグラフ、リノカット、水性木版、木口木版、様々な版表現を制作に用いる。職人の技と想像を組み合わせた版画からこそ、素晴らしい作品を作ることが出来ると思う。彫り、製版、版作り、刷り、版画全ての 過程はやりがいのあるチャレンジで、手を使って何かを作ることは作品、人生に意味を与える。

芸大
 東京芸術大学大学院生の頃、「なぜ日本?」と頻繁に聞かれた。世界中日本の木版画は有名なのだが、版画を勉強しに行ったと言っても、リトグラフ専攻だった。確かに、木版画以外の版種を勉強しに行く外国人は少ないだろう。

 モントリオールにあるConcordia大学で美術学部を卒業した直後、卒業旅行として1人で日本に行った。東京、京都、大阪を観光している間、日本の美術や文化がカナダとあまりにも違い過ぎたところが心に引っ掛かった。版画を勉強する為、日本に戻ると決心し、1年半後文部科学省の奨学金を得て、東京芸術大学の大学院に入学できた。リトグラフ専攻になった理由とは 、リトグラフ教授の作品が気に入ったからだった。木版画を学ぶ希望もあったが、一度版種を決めたら、決めた技法に専念しなければならなかった。最初は少し残念に思ったが、版種全て日本では技術のレベルが高いと芸大の研究室で気付いた。ヨーロッパ発技法のリトグラフも日本で勉強する価値あると強く感じた。制作するにあたっての 技術、道具、細かいところを留意するようになり、作品が一層上達できた。日本での経験のおかげで、アーティスト、人間として成長できたと固く信じている。終了後もリトグラフ作品を中心に、東京を拠点に活動してきた。

木版
 2014年の秋、たまたま国際木版画会議のイベントで通訳することになった。世界各国から水性木版画家が集まり、展示、講演が開かれた。色の重ね方、ぼかし、質感など水性木版画の特徴をうまく利用すれば、 繊細と同時に強い絵が可能になり、魅力的な表現だと再認識した。やはり、日本に居るのに日本の伝統的な版種である木版画を勉強しないのはもったいないと考え、2015年12月に水性木版の研究・制作を行う為、文化活動ビザを得た 。木版は一旦シンプルに見えるが、今までの作家活動で用いた技法の中、一番時間や苦労をかけたに違いない。この度、心を込めて制作した木版をモントリオールで展示することになり、日本で学んだ事をカナダで発表でき、とても嬉しく思う。



作品・文:Valerie Syposz
from-montreal.comではアーティストコーナーの原稿を募集しています。詳細はこちら