レストラン
|
今年、人々の生活スタイルの変化に伴い、それまでニュージーランド料理の店だった内装・外装を一新して、持ち帰り用のホットパイのお店に大変身した。 |
|
(左の上から右下に)ホウレン草+リコッタ+焼きトマト+ポルトベロ、バターチキン、野菜&ヤム芋、ステーキ+チーズ。どれも自信作と店の人が言うように美味しい。どれを選ぶかは好みだろうなぁ、という印象。 |
|
飽食の二人分として、パイ4つと付け合わせのグリル野菜(中)を食べきったが、普通の人なら、パイは1人につき1個か1個半で十分だろうというボリューム。 |
|
|
モントリオールにしては、消費者思いの持ち帰りシステム。ホットパイの蒸気がこもらず、手が汚れず、油じみが袋に出てくる心配もない。人の家に持って行くお土産としてもスマート。 |
|
まだお昼過ぎだというのに、ホットパイの棚にはあまり残っていない。マウント・ロイヤルを山頂まで歩いたり、雪遊びから帰る途中で買って、食べながら目的地に移動する人も多い。 |
|
|
季節に合わせたデザートも揃えているとか。今日はいろんなものが売れてしまって、あまり選択肢が残っていないという。 |
|
季節柄、どうしても仕事の締め切りが重なる。睡眠時間は大きく削れない歳になり、どこで時間を捻出するかというと、食事の支度や後片付け。今回は、こんな状況で活躍してくれるスポットを紹介したい。新鮮で温かい食事を待たずにピックアップでき、雪の日も気分がホンワカするようなお店だ。
マウント・ロイヤルの裾野、Mont-Royal通りとDu Parc通りが交わる辺りに、ニュージーランドが誇るミートパイのお店Ta Piesがある。昔はニュージーランド料理の食堂兼パブのようなお店だった。今年になって、人々の暮らし方の大変化にいち早く適応して、様変わりしたお店のひとつだ。その日に焼かれたパイが温かい状態でカウンターのショーケースに並び、これとこれと指をさせばすぐにパックしてくれる、おかずパイ専門店になった。しかも、袋に油が染み出すような包装ではなく、蒸気がこもらない箱にひとつずつ入り、手を汚さずに歩きながら食べることもできる構造。
頼んだのは以下の5種類のパイと、1種類のサイドメニュー
☆クラシック $6.50
☆ステーキ+ビンテージチーズ $7.50
☆ホウレン草+リコッタチーズ+ローストトマト+ポルトベロ $7.50
☆バターチキン $7.50
☆カレー風味の野菜&スイートポテト $7.50
☆グリル野菜(ミディアムサイズ) $7.50
全体評としては、どれもよくできている。パイ生地に気になる点がないし、どれを食べてもハーモニーを感じる。
★クラシックは根強い人気があり、ミートパイを結構な頻度で食べる文化の中で育った人たちにはたまらない定番パイだという。ひき肉、玉ねぎ、グレービーソースの基本の組み合わせ。
★ステーキは、使用している牛肉がクラシックより上質と見えて、味もこっくり深みがある。ビーフシチューなどが好きな人にはピッタリくる選択だと思う。
★ホウレン草+リコッタ+トマトは、おそらく今皆さんが想像している通りの味。なぜか、いろんな国の料理でみかけるあの間違いない味。
★バターチキンは、たまに食べるのには目先が変わっていい。中のトロっとしたカレーとふんわりサクサクのパイ生地は美味しくできている。
★個人的には一番お気に入りのカレー風味の野菜&スイートポテトのパイは、カレーという感じはあまりない。野菜のくったりした甘さに魅了される。肉気が必要ない人、ヤム芋が好きな人には、これがお勧め。
付け合わせとして頼んだ、Mサイズのグリル野菜がまたよかった。彩りもいいし、ボリュームもある。しっかり味のパイの箸休めとしてぴったり。お店で温めてもらって、家でお皿に取り分ける頃も、まだまだちょうどいい温度だった。しっかり食べた感が苦手なら、コールスロー($3.95 / $6.25 / $10.50)の方がいいかもしれない。もっとボリュームが欲しいなら、マッシュドポテト($3.50)やマッシュドピー+グレービーソース($4.50)なんてチョイスもあり。
量について触れておきたい。食欲旺盛の2人分のランチにするつもりで店に向かったが、実際パイの大きさをみて、思ったより小さく(見えた)ので、5つのパイ+グリル野菜(ミディアム)を頼んだ。並みの食欲の人なら、パイは1つでもいいかもしれない。お店のカウンターのショーケースの中では小さく見えたが、実際は厚みもありパイ生地も中身をリッチ。それでも、個人的にはパイ1つだけでは侘しいので、付け合わせを少し買うか、自宅でサラダやスープをつければちょうどいいと思う。
冷凍したパイもあり、食べる直前に自分でオーブンで焼きたい人のニーズにも応えてくれる。私が便利だなと思ったのは、パイ生地だけを単品でパウチした商品。パイの中に詰めるものだけ自分で作って、状態のいいこの生地に流して焼くだけで、それらしいパイが出来上がる。自宅に人が集まるときや、御呼ばれに持って行くときに使いたい。
デザートにも力を入れているらしいが、季節柄、ほとんどの商品が売れてしまっていて、店の中は空っぽなんだけど、とお店の女の子が言っていた。確かに、パイのショーケースやフリーザーはガランとしている。
とはいえ、コンパクトに配置された陳列棚やショーケースが並ぶ店内はかわいらしく、仕事でせかせかしていた気持ちがふっと緩む。ホリデーシーズンや雪の季節、雪道をサクサク歩きながら、ボタン雪をニット帽に積もらせながら向かいたくなるスポットだ。
Ta Pies(ミートパイ)
4520 Avenue du Parc
最寄り駅:Mont-Royal
取材・文:稲吉京子