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Sammi's Inner Mongolia Delicacy Restaurant(内モンゴル料理)
一口食べるたびに印象の違うフレーバーが口の中に広がる。
(2022/2/15)
レストラン
Sherbrooke通りのお店にしては間口が狭く目立たない。モントリオールで内モンゴル料理のお店は今のところここ1軒しかない。
頼んだ料理ごとではなく、料理法別に箱分けされている。
揚げラビオリは全部一緒に見え、食べてみみるまで何に当たるかわからない!
内モンゴル出身のお母さんの味。
できれば、出来立てを店内ですぐに食べたい料理だ。
これが店に入ってみようと思わせた内モンゴルのガレット(パンケーキ)。お好み焼きのような親しみの湧く一品。
半々で頼んだはずの蒸しラビオリと揚げラビオリだが、なぜか揚げラビオリばかりに...。蒸しラビオリの優しい水水しい感じが好きだ。
小さな赤い暖簾の向こう側で店主のSammiさんが、食べて育った地元料理を準備している。
Sherbrooke通りを車で西に向かっていた。グレー一色の2月の景色の中に、一瞬「モンゴル」という文字が見えた気がした。ケベック州でモンゴルという文字に出会ったことはあまりない。カナダ全土でもない気がする。知り合いのイラン人一家から聞いたペルシャ系のパンを買いに行く途中だったが、「モンゴル」の文字まで引き返すことにした。一通の多いモントリオールでは、一旦通り過ぎてしまうと戻るまでにものすごく時間がかかる。やっと小さな店の前まで戻ってみると、「内モンゴル料理」のレストランだった。

モンゴルのゲル(モンゴル遊牧民の移動式住居の丸いテント)で毎日飲んだバターミルクや大鍋で作るシチューなどが思い出される。小ぶりの肉まんのようなものも食べたっけ。 ガラス窓に貼られたメニューで「Galette de la Mongolie IntérieureInner 」(内モンゴルのガレット)というのに目が留まった。ますます興味がわく。 イランのパンは次回にして、早速Sammi’sに入ってみた。去年の5月に開店したばかり。現在は持ち帰りのみのサービス。メニューには、エダマメなどの日本っぽいもの、厚揚げの炒め物などアジアンレストランでよく見る料理が結構あったが、モンゴルらしい料理に絞って注文することにする。

- 内モンゴルのガレット(ビーフとキャベツ)$11.30
-ラム肉とクミンのラビオリ $12.79
-野菜ラビオリ $12.99
-チャイブと卵のラビオリ $11.99
-ズッキーニと卵のラビオリ $11.99
-ビーフとトマトのラビオリ $12.05
-チキンとカレースパイスのラビオリ $11.99

期待の「内モンゴルのガレット(パンケーキ)」は、具少なめの薄いお好み焼きを、油をしっかりひいて焼き上げたような感じだ。サクッとして中はしっとりしたなじみのある味。あ〜、ビールが美味しい。

ラビオリは、蒸したタイプを中心に頼もうと思っていたが、レジの女の子が揚げたものがおすすめだと言うので、蒸しタイプと揚げタイプ半分半分でお願いした。 いくつかの箱に分けて入れてくれたが、家に帰って各箱を開けると、どういうわけかほとんどが揚げたタイプになっていた。さらに、ラビオリの種類が見た目では判断がつかない。頼んだメニューごとではなく、調理法(蒸しorフライ)ごとに分けられていたからだ。確かに理にはかなっているし、口に入れるまで何味かわからないというのも面白い。

注文の際アドバイスをくれたレジの女の子というのが、奥のキッチンで料理を作っているSammiさんの娘さんだった。大学生ぐらいだろうか。彼女と話しているうちに、内モンゴルは中国の政権下にあり、一国であるモンゴル共和国とは料理も文化も少し違うということを思い出した。私がモンゴルに足蹴く通っていた時代に、あるカメラマンから「おまえの顔はモンゴル系だから大丈夫だ、向こうでも受け入れられるだろう」などと言われた。モンゴルの全人口の大半を占めるモンゴル民族は、漢民族をあまり受け入れたがらないという事情が当時はあったらしい。内モンゴル自治区の人口は、大半が漢民族だ。 どうりで、内モンゴル料理(少なくともSammi’sは)は中国料理の影響が色濃いわけだ。

さて、その中国料理を思わせる蒸しラビオリと揚げラビオリ。 ラム+クミンの具が、内モンゴル料理では典型的だと言われたので頼んだが、ラム肉の匂いに慣れてない人には少しハードルが高いかもしれない。肉経験の多い人には好まれるようだ。 意外にも、野菜のラビオリはオーソドックスなギョウザ的な美味しさで、肉食中心の私の連れにも高評判だった。私はチャイブ(ユリ科ネギ属のハーブ)+卵の具や、面白い所でトマト+ビーフ、チキン+カレースパイスなどに好感を持った。どちらかというと、蒸したものの方が好みで、連れは揚げたものが好みだったようだ。 蒸し・揚げラビオリいずれにせよ、一口食べるたびに印象の違うフレーバーが口の中に広がるのは、なかなか面白い経験だった。

Sammi’sの店内は、小ぶりで家庭的。一家の2世代のアイデアによる工夫が感じられる内装だ。店内飲食が可能になって、出来立て、揚げたての料理が食べられるようになれば、Westmountの地元客が集まるお店になるだろう。

Sammi's Inner Mongolia Delicacy Restaurant(内モンゴル料理)
5175D Sherbrooke West
最寄り駅:Vendôme


取材・文:稲吉京子