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レストラン
過去10年間でこの通りを何十回と歩いたが、Maison de Seoulの存在に気づかなかったことにも驚く。
韓国独特の小皿の前菜から始める。ナムルが美味しい。ジャガイモの煮物もどれも知った味で安心する。
このチヂミを食べにこのレストランに来たようなもの。写真ではわかりにくいが、ふっくら感がすごい。食感も味もヒット。
17年ぶりぐらいに思いだして食べてみたジャージャーミョン。当時はそう聞こえたが、実際はJajangmyeon と綴るらしい。 黒豆のソースと絡めて食べる麺は見た目とは違って穏やかな味。
野球部キャッチャーの高木君の家に寄ったら、さあ、あんたもついでに食べてきなさいと言われて出されたご飯のようなイメージ。味も健康的。ボリュームも今どき珍しいかも。
理由ははっきり覚えてないが、韓国人の知り合いは、箸を両手に一本ずつ握って、両サイドから麺を持ち上げるようにして、結構しつこく混ぜていた。一応私も軽く混ぜてみる。
 ウエストマウントで用事を済ませた後、Sherbrooke通りのMandy’s(2017年4月にオールドポートの支店を紹介)で山盛りサラダを食べていくつもりだった。到着すると、店の外に6人程度の列ができている。列に並ぶのが性に合わない私たちは、急遽別のレストランを探す。キーワードはDecent。行き当たりばったりもいいけれど、こんなものにお金を払うのかという体験は避けたい。思いついた人々にDecentの単語を使ってメッセージしてみると、ウエストマウントに何年も住んでいたという知り合いがすぐに返事をくれた。

 Maison de Séoulというコリアンレストランのシーフード・チヂミがお勧め!という具体的な情報にピンときた。しかも、Mandy'sから通りを渡った真向いにある。その気で探さないと目に入らない印象の、昔からのレストランといった佇まい。

 水曜日の午後2時ちょっと前に入店すると、中には2組のお客さんがいた。1組は韓国人系ケベック人、もう1組は純粋ケベック人。どちらもおなじみさんのようだ。

ランチメニューはパスして、壁に貼られたフルメニューから、3皿を選んだ。
●友人お勧めのシーフード・チヂミ(メニューではseafood pancake)$16
●ジャージャー麺(メニューではJajangmyeon)$15
●プルコギご飯(メニューではBulgogi Deopbap)$18

 通常モントリオールで韓国料理を食べるなら、店のスタイルを掴むために必ずビビンバは頼むところなのだが、今回はジャージャー麺が気になってそちらを頼むことにした。昔々トロントで出会った気のいい韓国人たちが、両手に一本ずつ握った箸で真っ黒いソースと麺をぐちゃぐちゃ混ぜていたのを、メニューのJajangmyeonの綴りを見て思い出した、というか「ジャージャーミョン」と聞こえたあの黒い食べ物ってもしかしてこれ!?と気づいて懐かしくなったのだ。

 韓国料理の特徴でもある先付けの小皿料理、もやしのナムル、キュウリのナムル、キムチ、ジャガイモの煮物が、味噌汁と共に出てきた。さすがにわらびのナムルは出てこなかったが、どれもお母さんの味のような安心感がある。キムチは万人が食べられるようになのか、あまり辛くなく癖もない。もやしのナルムをすぐに平らげてしまうと、お替りを持って来てくれた。

 チヂミ、ジャージャー麺、プルコギが同時に運ばれてくる。チヂミは私が知っているチヂミとはまったく違う。ソウル市内で食べたチヂミとも、日本に住む韓国人家族の家で食べたニラチヂミとも、新宿2丁目のオンマキッチンのチヂミとも、トロントやモントリオールのコリアンレストランのチヂミとも違う。ふっくら高さのあるホットケーキのような丸い形で登場し、期待を上回る美味しさ。ふんわりした生地全体からうまみが感じられる。また来ようと思わせる久々のヒット。

 ジャージャー麺は、やっぱり真っ黒なソースがたっぷりかかった韓国麺だった。当時つるっとした顔の韓国青年が、「見た目でこの食べ物を判断しないでほしい」と言っていた熱い口調をはっきり思い出した。そう、濃厚な味のソースに見えるけれど、オイスターソースや醤油の色や味ではなく、黒豆からできているソースなのだ。味付けは穏やか滑らか。これは、一皿をひとりで食べる料理ではなく、人とシェアしてこそ良さがにじみ出るタイプの麺料理だと思う。そして、プルコギ。肉肉した食事を好む連れのために選んだのだが、味付けといい、お肉と一緒に炒められた野菜の量といい、好感が持てる。既製の焼き肉のタレのような味になっていない。部活の後、誰かの家に寄ってついでにごちそうになった夕ご飯のようなバランスのとれた健康的な食事だ。ボリュームも野球部並み。これも人とシェアしてちょうどいいかもしれない。私とパートナーはかなり量を食べる方だが、今回頼んだフルサイズの3皿はかなり多い。この3皿を3〜4人ぐらいで食べるのがちょうど良さそうだ。焼肉メニューも人気だと言う。

 会計の際にオーナーらしいマダムに聞くと、もう16年ここでレストランをやっているそうだ。その実力の一部を垣間見た気がする。トロントで、図々しくて熱血な韓国人たちに会ったのも、ちょうどそのくらい。みんなどうしてるんだろうか。ドライブ中にトイレに行きたいことが恥ずかしくて言えず、オッパー(年上の男性たち)には絶対言わないでと懇願され、私がトイレに行きたいことにしたソンミ。大学院での研究が日本の「総理大臣賞」にあたる賞を受賞し、Samsungから内定が出たエンジニア志望のヨンフン。その後、偉い人との面談での理不尽が許せず、机を拳でたたいて内定を断ってしまった。そのヨンフンに片思いしていた済州島出身のジャネット。遠距離恋愛している彼女に振られるんじゃないかと戦々恐々としていたミンジン。友人を指さしながら、「俺、コイツのためなら死ねるぜ」とアニメ調の日本語で言っていたチャンデ。濃いリアルな韓国を思い出したのはMaison de Seoulのご飯のせいかもしれない。

Maison de Seoul(韓国料理)
5030 Rue Sherbrooke O.
最寄り駅:Vendôme


取材・文:稲吉京子