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Grozépa Microbrasserie(ビールバー)
モントリオールの夏の楽しみのひとつ。
(2021/8/15)
レストラン
「黙示録の4人のサーファー」:フルーティーな明るい軽やかなビール
「Momo」:ホップにこだわった苦味と重厚感もほどほどあるビール
「ロケット菜とクルミの蜂蜜+バルサミコ酢のサラダ」前菜ではなく、メインディッシュにもなるボリューム。
「プティン・牛肉の煮込み乗せ」プティンの領域では完成度の高い味(なのではないかな?)
Papineau通りから見える活気あふれる雰囲気に引き寄せられて中を除くと、意外と落ち着いたダークな木目調の店内。
店内の落ち着いた雰囲気もいいが、この季節はやっぱり外のテラス席で風に吹かれたい。
 モントリオールの夏の楽しみのひとつにマイクロブルワリーのビールがある。ケベック州では、自社ブランドのビールを開発、販売しやすい機構が整っているため、資金さえあれば飲食店ならずとも、個人が自分ブランドの地ビールを作ることさえできる。

 少し変わった由来の地ビールに出会えるマイクロブルワリーに偶然入れば楽しいし、そうでなくても、把握しきれない種類の地ビールを生で気軽に味わえるのは、モントリオールの地ビールバーの魅力だ。

 今月は、暑い日でも日本人好みに涼しく過ごせる、Rosemont La Petite-Patrie地区にあるGrozépaを紹介しよう。そのさりげないロケーションと、日陰率の高さと質、風通しの良さがまずおすすめの理由だ。St-Denis通りやCresent通り辺りの地ビールバーはちょこっと立ち寄りならいいが、ゆっくり日が暮れていくのを楽しむならダウンタウンから外れた居心地の良い広々した店がいい。パラソルが作る日陰程度では物足りない、お隣さんのデオドラントを感じたくない、少しロマンティックに行きたいという人も少なくないはず。

 店内やテント屋根付きのテラス席に座りたいなら、電話かウェブサイトからオンラインで予約できる。私たちは車で通りがかって、簡単に駐車スペースが見つかったので立ち寄ってみただけだが、それでも、隣には誰もいない外の席にすぐに案内してもらえた。屋根はないが、Grozépaの店舗が入っているビル全体が西日を大きく遮って、テント屋根のテラス席を含め、外の席エリア全体が完全日陰になっている。半分立っていられるような高さの椅子とテーブルなので、腰の負担を考え椅子に座り込みたくない私には、片方のお尻だけを引っかけるタイプの椅子はむしろありがたい。

頼んだ生ビールと食べ物は以下の通り。

■Momo (5%) $8.75 (500ml):IPA、MosaicのダブルホップとニュージーランドのホップMotuekaを使用
■Les Quatres Surfeurs de L'apocalypso (6.5%) $8.75 (500ml):ライチ、洋ナシ、キャンディーのアロマの白ビール
■ロケット菜とクルミの蜂蜜+バルサミコ酢のサラダ $9.95
■牛肉の煮込み入りプティン $10.95

 まず生ビールが運ばれてくる。IPAのMomoは名前とは裏腹に骨太な味。ホップに力を入れているせいか、苦味も低い位置で幅を利かせる感じのしっかり感があり、それでいて定番になれるような普通さもある。メニューにあるプティンのようなヘビーな食べ物からハンバーガー、タコス、ピザぐらいのファット度にはぴったり。サラダと合わせると、少しビールが勝ちすぎている印象か。 その点、もう一方のビールのLes Quatres Surfeurs de L'apocalypso(黙示録の4人のサーファー)は、軽やかでフルーティー、目線よりずっと高い位置で広がって消える感じのブロンド系。これならサラダと同じラインで楽しめる。かなりはっきりしたライチや洋ナシの明るさが鼻腔で弾けて、ビールオンリーで飲むときにもよさそうだ。

 ジョッキの上5分の1ぐらいが空になったころ、料理が運ばれてきた。 ロケット菜とクルミのサラダはイメージしていた通り、単品でディナーにもできるボリュームがあり、たんぱく質や良い脂質もカバーしている。薄く幅広く削り出したエメンタール、クルミなどがまともな量入っていて、ワイン派にも合うだろう。 牛肉の煮込み乗せのプティンも、期待値をちゃんとクリアしていた。バーだからこんなもんか、というレベルの食べ物を出すところは、地ビールがいくら美味しくても足が向かなくなる。ここのプティンは、見た目も味もエンターテイナーだと思う。何かが突出してスペシャルというわけではないが、味と食感など全体的なバランスがよく、外出気分が盛り上がる一品だ。自らプティンをオーダーしたことはないが、一緒に飲みに行く人たちはかなりの確率でプティンを頼むので、各所、各店でプティンはつまんできている。すこし冷ややか視線でプティンを眺められるポジションにある個人としての意見では、ここのプティンは悪くない。

 住宅エリアにあるGrozépaは週中でも夜はいっぱいになる。お店の女の子に言われたが、夜来るのなら予約した方が安全そうだ。私たちが午後9時ごろ店を出ると、入店するために待っている人たちが少なからずいた。予約なしで木・金・土曜辺りに行くのなら、開店(午後4時)〜6時までには入った方がいいかもしれない。実は、ハウスビールを試したかったのだが、今は切らしているという返事だった。毎週水曜のキューバ音楽のライブも、ポスターは大々的に張り出しているのに、パンデミック以降やっていないと言う。各地ビールもストックがなくなれば、次回いつ入ってくるかわからないという状況らしい。こういう肝心な部分がオーガナイズされていないところがケベック州らしいが、しっかりお目当てのビールがあるのなら、あらかじめ有無を確認しておいたほうが良さそう。Grozépaのウェブサイトのメニューにはないが、店にはあったりするビールもある。つまるところ、あまり期待せず、細かい計画は立てず、オープンマインドを心がければ、何があってもなくても、いい気分の夏の夕暮れになるだろう。

Grozépa Microbrasserie(ビールバー)
5885, ave. Papineau
最寄り駅:Rosemont


取材・文:稲吉京子