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Dosa Pointe(ドーサ料理)
複雑なスパイスの妙技を感じる。
(2020/11/1)
レストラン
まったく下調べをせずにいったので、お店でいろいろ話を聞き、注文をして、20分待って持ち帰るという流れに時間を費やした。その間の客足の多さに驚いた。その間、アジア人は私ひとり。白人ゼロ。アラブ系ゼロ。
パッと見て炎マークを感じさせないビュー。
ポテトベースのガーリックマサラのドーサ$11。炎4個。味がしっかりしている上かなりホット。翌日の冷えたドーサはなかなか。
チキンのひき肉ペーストのドーサ$10。炎2個。他になにもホットなものがなければ、もっと味わえたと思うなかなかバランスの取れたドーサ。塩味も強め。
ドーサを頼むと必ずついてくるココナッツベースのちょっぴりピリッとする程度のチャツネ2種(白と薄緑色)と、すべてを席巻するサンバール。実は注文そたものができるまで20分待っている間、近所のお店でサモサを買い食い。そのうちの最後のひとつ。これも結構辛かった!
IdliとVadaのセット$5.50。白い方がIdliで、蒸しパンのようなふんわりした優しい味。なんにでも合う。ドーナツ型のVadaもごく軽い塩味で、サンバールでゴーッとなっている口に穏やか。
 紅葉も終わりかけ、マフラーや手袋が欲しいこの時期、額がじわっと汗をかくような食べ物を紹介したい。 南インド料理に、大きなクレープを折ったり巻いたりしたようなDosa(ドーサ)という食べ物がある。米粉やムング豆の粉を使った、かなり薄いサクサクした生地の大判クレープの中央に、マサラなどの具を包んだもので、南インドではサンバール(豆や野菜のスープ)と一緒に日常的に食べられる。

 インドでケララ州に南下する長距離バスに乗ったときのこと。24時間近くかけて移動するバスは、途中数回休憩所に停まる。露店が立ち並び、安全な飲料水、食事、トイレへの唯一のアクセススポットだ。それを逃すと数時間はノンストップ。その立ち寄り先のひとつで食べたのがドーサだった。注文して2分も経たないうちに運ばれてくる、香りのよい焼きたてドーサをハフハフして食べた。ココナッツの緩いペーストや、今思うとあれがサンバールだったんだなと思わせる汁ものがついてきて、とにかくすべてがめちゃくちゃ美味しかった記憶がある。

 そのドーサの専門店がJean Talon通りのインド系レストラン地区にあるという。まずはそのDosa Pointeに行ってみた。イートインはできず、完全に持ち帰り用のお店に切り替わっていて、中には待っている客が絶えず3、4人はいる。注文したものをピックアップに来る人の出入りが多いこと。店の外にも学生らしい若者グループが待っている。見かけるお客さんは、ほぼ100%そっち系ルーツをもつ人々ばかり。

 誠実そうな女の子にいろいろと質問して相談に乗ってもらって、頼んだのはこれ。

● IdleとVadaのコンボ (白い蒸しパンとかなり薄い塩味のドーナツ風のパン)$5.50 
● Achari Chicken Keema Dosa(チキンのひき肉のペースト入り)$10
● Chilli Garlic Masala Dosa(ポテトベースのガーリックマサラ入り)$11

 聞いてはいたが、スパイスが上級者向けだ。普段聞きなれないスパイスの組み合わせを使っている。さらに、炎マークの数でホット度がわかるようになっていて、Achari Chicken Keema Dosaは炎2個。Chilli Garlic Masala Dosaはマックスの炎4個。

 炎2個のチキンのひき肉のペースト入りドーサは、味はいいが辛さも結構ある。炎1個の意味がやっとわかる。無意識に一般的な店で使われる炎マークを基準にしていたのが間違い。 そもそも、どのドーサを頼んでもついてくるチャツネ2種類(白と薄緑)とサンバールがすでに辛め。ココナッツベースのチャツネは丸みと甘味の後にピリッとする程度だが、サンバールは続けて食べていると、鼻の頭の毛穴がぷはっと開くのがわかる。 サンバールをぱくぱく食べ、炎4個のポテトベースのガーリックマサラ・ドーサを食べていると、各食べ物の違いがよくわからなくなってくる。

 そんな中、救ってくれたのがIdleとVadaの存在。真っ白いふわふわの蒸しパンと、オールドファッションのような体裁の優しい塩味ドーナツだ。ドーサやサンバールの熱を冷ましてくれる箸休めのような役割を果たす。これにも、もちろん2種のチャツネとホットなサンバールが付いてくる。

 そのサンバール、3個もついてきちゃったので、ひとつは冷蔵庫行きとなって、2日後の野菜料理の味付けに活躍することとなる。1度にたくさん量を食べられないだけで、味はやっぱり美味しい。少しずつ取っておいた冷えたドーサを翌日食べてみる。正直、悪くない。時間が経っても美味しいのは、やっぱりプロの技なのかなぁと感心。複雑なスパイスの妙技を感じるし、前菜のパン類にしても、ドーサにしても、マサラにしても、きっちりハイスタンダードを守って作っているのがわかる。

 ドーサは、焼立てのさくさく感と具のねっとり感とのコントラストが味わいのひとつだが、持ち帰りにするとその良さが少々犠牲になるのが残念。20分の移動中に蒸気でかなり全体がしっとりしてしまう。ピックアップしたらすぐに食べるか、蓋を開けたままにして持ち運ぶとかすればいいかも。そして、何と言ってもDosa Pointeでは、炎の数に注意!辛いものはそこそこ大丈夫という人も、まずは炎なしか炎1個ぐらいから試すのがいいかもしれない。それと、サンバールは最初に食べずに、ある程度ドーサを味わってから、そろそろと口をつけるといいかもしれない。

Dosa Pointe(ドーサ料理)
895 Jean-Talon west
最寄り駅:Acadie, Parc


取材・文:稲吉京子