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Haru Hana(韓国料理)
お母さんが「ピピンパッ」と即答。
(2020/12/1)
レストラン
石焼きビビンバのカリカリ感はないが、みんなが美味しく食べられる王道の味。
癖のない穏やかなパジョン。
トッポッキと豚カツ。全体を覆うように、一口サイズの豚カツが乗っていたのを少し横に寄せて、トッポッキが見えるようにした。甘辛のムニムニと、カツのサクサクが意外なコンピ。
鮭のテリヤキBento。人が作ってくれた和食っぽいものを堪能。チャプチェ、キュウリのキムチ、ミニ餃子が嬉しい。
Bentoについてきたミニシナモンロール。こういうのも、かわいい・嬉しい心遣い。
すっかりお持ち帰り店として貫禄が出てきた感じの店内レイアウト。冷蔵庫や炊飯ジャーがフル稼働。
ガラスに張り出されたメニュー。
Haru Hanaの近くでかなり大がかりな道路工事をしてる。そこの工事現場に毎日来ている男性と立ち話。冷える外で働いているので、あったかくて少しスパイシーなHaru Hanaのランチがお気に入りなんだとか。前は自分でランチを持ってきたりハンバーガーを買ったりすることが多かったが、ここのGyu-donやBulgogi Bento, Rice cakeなどでアジアご飯のファンに。
 モントリオールに長いこと住んでいて、ホームシックもないし、日本の食べ物がないのが辛いという症状もなかった。私は和食がなくても大丈夫なタイプなのだと思っていた。それが違った。これまで毎年1、2回は帰国していたし、いつでもぷらっと帰れるという選択肢が頭の隅にあった状況と今は違う。各国間の移動が簡単にできなくなって、10カ月程になる。日本にはもう1年半帰っていない。最近は、何食べたい?と人に聞かれると、なにか日本っぽい物、という答えしか出てこない。

 ノートルダム病院でのアポの後、あれ、和食?と思わせる名前のレストランHaru Hanaの前を通りかかる。道行く人に見えるようにメニューが店のガラスに張り出されている。韓国料理とBento、Ramen、Katsu、Karaageという文字も見える。定番の日本っぽいメニューもありそうだ。中に入ってから落ち着いて選ぼうと、ドアを開けると、ぎっしり並んだテーブルにぶつかった。文字通り一歩も中に入れない。奥の奥から出てきた韓国人のお母さんに、すいませーん、今ここでオーダーしてもいいですか?と聞くと、最初むすっとしていたから、ダメなのかと思った。それでも負けずに、何かジャパニースが食べたくてずっと探していた、このお店のオススメのメニューとか、いくつか持ち帰りたいんですぅ〜と叫ぶと、まあそういうことなら的な笑顔になって、相談に乗ってくれた。

頼んだもの:

● 鮭のテリヤキ Bento $11.50
● 牛のビビンバ $11.50
● 豚カツ+トッポギ $12.50
● パジョン(チヂミ)$8.05

 夏が終わるあたりから、塩サバ定食なんかのことを悶々と考えていた。それに一番近いものという基準で鮭を選んでみた。鮭をテリヤキにしてしまうところが少々残念だけれど、とにかく日本的なご飯が食べられる。実際はテリヤキというより、野菜と鮭の切り身の甘酸っぱ炒めという感じ。付け合わせには、チャプチェとキュウリのキムチ、それに小さいカリっとした餃子2個が入っていて、美味しいしっかりしたお弁当だ。プラス、一口サイズのシナモンロールがついてきた。すべてが出来立てで綺麗に作ってある。日本人の友人が秋口に漬けてくれたキュウリと紫蘇とショウガの漬物を出してきて、日本のご飯らしさをアップ。

 お店で、何がオススメですかね?とあえて漠然とした質問を大声で投げかけたら、 奥にいる(遠い!)韓国のお母さんが「ピピンパッ」と即答。やっぱりそう来るかぁ。でも持ち帰りだから石焼き状態じゃないですよね?と聞くと、もちろん無理だけど、調理場で娘がうまくやってくれるよ、という。なるほど、娘さんとお母さん二人で切り盛りしているらしい。その流れで頼んだ、牛肉のビビンバは、やっぱり日本人が好きな安心する味。パリパリにはなっていないけれど、ナムルとお肉とご飯がごま油ベースのソースと混ざると、食欲を刺激する。

 私が日本人だと知ると、Katsuあるよ?と勧めてきた。日本人はみんなカツが好きだと思っているのかもしれない。韓国っぽいものでもう一声、と返すと、すぐに「ライスケイクゥ〜はどう?」。「ああ、トポッキィ〜。いいね〜」「それにKatsuついてるのがあるよ」と、やっぱりカツを食べさせたがるので、それを頼んでみた。トックと呼ばれる韓国のお餅を甘辛いソースで炒め和えたトッポッキは、はい、韓国の味。寒い日の午後に食べたくなる味。少しピリッと辛いが同時に甘く、円柱状のトックが口の中でムニッっとする。その赤いソースに浸ったトッポッキの上に食べやすいサイズになった豚カツが乗っている。不思議な組み合わせだけれど、豚カツが美味しい。カラッと上手に揚げてある。

 最後にオマケで頼んだパジョン(チヂミ)。これもお母さんが「パジョン〜もあるよ」とますますテンションが上がっていくので、これも素直に聞いておいた。普通に美味しい。付いてくるパジョン用のタレが好評だった。 調子に乗って、「じゃあオンマ〜、キンパップ(韓国の海苔巻き)もやってる?」と聞くと急にクールダウンして「ないない」。High and Dryが頭の中で流れる。無表情に戻ったお母さんは、奥の調理場にオーダーを伝えに行き、私はカードでピピっと支払いを済ませる。外で15分程度待って、できたものを手渡してもらったら、あとはBerri UQAMの駅まで1分とかからない。 気をつけたいのが営業時間。11時〜16時までと短い。夕食を買って帰りたいときには、電話かオンラインで注文しておいて、ぎりぎり4時に駆け込むのもあり。

 偶然通りかかって、ふらっと入って(入れなかったけど)注文したものにしては、期待を上回る楽しいテイクアウトだった。メトロで移動していて、Berri UQAM駅で乗り換えがあるときに、ささっとHaru Hanaでピックアップして家路に着くという使い方にもおすすめ。もちろん、日本っぽいお弁当が食べたい人にも。

Haru Hana(韓国料理)
912 boul. Maisonneuve East
最寄り駅:Berri UQAM


取材・文:稲吉京子