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Art45 (2014/6/1)
ギャラリー
(C) Ken Matsubara
(C) Ken Matsubara
(C) Ken Matsubara
(C) Ken Matsubara
 今回は、Edifice Belgoの2階にあるコマーシャルギャラリーArt45から、東京在住の日本人アーティスト松原健氏による「Repetition(邦題:反復)」という、ミクストメディア作品の展示の様子をお届けします。

ー 黙想的な空間 ー

 窓の光が遮られ薄暗く静まり返った展示室に足を踏み入れると、先ず目に飛び込んでくるのは室内に所狭しと置かれた11台の譜面台です。それぞれの譜面台の上には「本」のような物が載せられており、見開きの片方のページには古い写真、もう片方にはループ再生されたスローモーションの映像が青白く浮び上がっているのが見えます。近くに寄って写真と映像の両方に添えられたタイトルをよく比べてみると、昔その写真が撮られた場所を訪ね、現在の様子を映像でとらえたものを並置したものだと言う事が分かります。注目したいのは、この映像がただ単に映し出されているのではなく、白い紙のページを介して映し出されていて、映像があまり鮮明に見えないような仕掛けがされていると言うところです。映像を映し出すスクリーンのような露骨な器具を隠すと言う意図もあるかとは思いますが、それ以上に、過去の様子が鮮明に見え、現在の様子がぼやけて見えるという対比が生み出されている事に気づきます。そのせいか、譜面台やループ再生されている映像といった物から連想させられるような「同じ事が無限に繰り返される」と言う意味合いでの「反復」をこえ、何一つ留まる事無く常に移り変わる「無常」の中における、無限の「循環」と言う意味での「反復」という解釈も出来るような気がしました。

 さてこの作品は、べトナム、ドイツ、アメリカ、日本などで撮られた古い写真がベースになっているのですが、個人的にはその中でも、先の東日本大震災で甚大な被害を受けた大船渡市にある大船渡小学校の昔の写真と(*正確には松原氏の友人の幼少期の思い出の写真)、学校のプールの水面に映った現在の小学校を写した映像の対比、そして松原氏が少年時代に鎌倉海岸で母親と一緒に撮影した写真と、近年同じ海岸で撮影された、波に洗われる松原氏の足の映像の対比に、記憶の儚さや移ろいと言うものを感じました。

 ちなみにこの作品展には「Repetition Book」という展示に添えられて松原氏が作った非公式パンフレットが受付に有り、一つ一つの写真の説明が書かれていますので、作品の事をより詳しく知りたい方は、ぜひ手にとって読まれる事をお勧めします。

ギャラリー:Art45
所在地:372 rue Ste-Catherine Ouest #220
スケジュール:金〜土:12時〜17時
メトロ:Place-des-arts
ウェブサイト:HP

文/Text:畑山理沙/Risa Hatayama
Photo: courtesy of Art45